原稿 整理 安堵
このところ原稿を書く業務が多い。
何万字書いてるだろう。
分野パネル原稿、解説トーク用、作品個別解説用原稿。
パリ関連作家の原稿、講演会の原稿・・・。
それとは別に、ようやく、去年暮れに放送された、ワーグナー・オペラのライブ録音放送の整理にとりかかった。
「ニーベルングの指輪」、四日分の夜を使って上演されるこの大作を、よく作曲したものだ。
ワーグナーのオペラには他にはない深い深い翳りがあり、時折、閃光が闇を切り裂く。
昼の光ではなく、夕暮れでも朝でも、月夜でもない。
狭く限られた世界のほんの一部を照らすのだが、暗闇に慣れた目には眩しい。
他のどの作曲家の作品にも、この翳りと閃光は見い出せない。
女としての日常、特に意識することなく過ごせている。
この、どうということなさを、切望していた。
世を去るその時まで、嬉しいままの気持ちが続きそう。
嬉しい。