原稿 整理 安堵
このところ原稿を書く業務が多い。
何万字書いてるだろう。
分野パネル原稿、解説トーク用、作品個別解説用原稿。
パリ関連作家の原稿、講演会の原稿・・・。
それとは別に、ようやく、去年暮れに放送された、ワーグナー・オペラのライブ録音放送の整理にとりかかった。
「ニーベルングの指輪」、四日分の夜を使って上演されるこの大作を、よく作曲したものだ。
ワーグナーのオペラには他にはない深い深い翳りがあり、時折、閃光が闇を切り裂く。
昼の光ではなく、夕暮れでも朝でも、月夜でもない。
狭く限られた世界のほんの一部を照らすのだが、暗闇に慣れた目には眩しい。
他のどの作曲家の作品にも、この翳りと閃光は見い出せない。
女としての日常、特に意識することなく過ごせている。
この、どうということなさを、切望していた。
世を去るその時まで、嬉しいままの気持ちが続きそう。
嬉しい。
秋
今年は秋がたっぷりある。
いつもは、暑い夏が終わるといつの間にか冬になっていた。
そろそろクリスマス商戦か活発となり、それらもせっかくの秋を見えにくくしているように思う。
夏、フランス行きの前に戸籍が変わり、帰国してからほとんどの日をスカートで出勤し勤務している。残り時間を考える癖がつき、ほんの一日が惜しいから。
月に一度だけのスカートの休日、駅で着替えて出かけ、駅で着替えての帰宅が数年間続いた。
3年前から週末だけのスカート、仕事にはパンツのパターンが、今年6月まで続いた。
ようやく迎えたこの日常。
暖房はまだ入らず、ストッキングにスカートでは膝も脚も腰も冷えるけど、今はまだ嬉しい。
もうすぐ講演の日、当日の原稿はできた、バッグも用意した、どんなスーツが良いか考えている。
帰りはどこかによってケーキ、温泉はもう寒いかもね。
講演
ある市より依頼を受け、12月に講演をすることになった。
内容は先のパリ調査が土台になる。
還元できそうでよかった。
10年近いブランクを戻した格好になる。
いつもと同じ新しい今日
遅い夏休み。
帰国後まとまった休みがなく、ようやくのんびり過ごした。
最後の挨拶のため、主治医の所へ。
本当に長かった、先生も私も、長かった、長かったねと数回口にした。
長かった。
すべてのカウンセリングが済んだ。
随分と泣き続けたが、仕事が私の救いだったと話した。
お礼を言って診察室を出た。
今日を迎えられよかったと思う、明日は明日という今日を迎えられ、良かったと思う。
ワンピース
トランスを始めて服装を変えて(戻して)いった。
肌着、パンツ、小物、トップス。ワンピースは難しく、数年間着こなせなかった。
今はワンピースで通勤し、仕事している。
スカートを抜ける風が心地よい。
スカート通勤を選ぶことが多く、風を楽しんでいる。
自分の持ち時間はそう長くないと思うから。
近年は女性のパンツスタイルが定着し私以外ではスカートは二人くらいしかいない。
夏場、体に合ったワンピースは気安くていい。
肌着の上から被り髪を直せばすぐ外出できる。合わせたバッグを持てば大抵の場所に出かけられるし仕事にも行ける。
ひざを抜ける風が気持ち良い。
嬉しい。
写真は、昨日買ったワンピース。中身はともかく服は同じ。